温風機ビート育苗システム開発:温風機で変えた、ビート育苗の新常識

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これまでの常識を変える。課題が明確ならばやり方はいくらでもある。

「ビートの育苗にかかる資材費が高すぎる――なんとかならないか」そんな農家の声が、開発の原点でした。砂糖の原料として北海道でしか生産されていないビート(てん菜)。現在は直播(畑に直接種を蒔く)での栽培が増えてきていますが、かつてはその多くがビニールハウス内で「育苗」を行っていました。外気温がマイナスになる中での育苗には多額の経費がかかります。その課題を解決すべく、塚田英樹と高橋文男を中心に、温風でハウス内をあたためる「温風機ビート育苗システム」を一年かけて独自開発。ホクレンの後押しもあり、補助事業ビートビジョンによって全道に広がりました。2年後の1995年には特許も取得しました。

テキスト:外山暁子

Index

    事業名

    温風機ビート育苗システム 開発

    事業内容

    ビートの育苗はまだ雪深い3月中旬から始まります。各農家にあるビニールハウスに苗床を作るのですが、まだ外気温はマイナスが続くため、ハウス内の苗が凍えないように育てないといけません。そのため、二重トンネルのビニール、毎年購入するビート専用の保温マット、さらにはジェットヒーターを使用するなど、資材が高い、さらには温度・湿度管理が適切にできず苗の病害が発生する、と言われていました。これを受けて開発に乗り出したのが、塚田と高橋です。1年間の試験期間を経て「温風機ビート育苗システム」が完成。北海道農業の一大農産物であるビートの育苗に貢献しました。

    事業の経緯

    「ビート育苗の資材代がかなり高額になっている、何とかならないか」と相談が持ちかけられました。当時はマット式が主流でそれが保温効果にもなっていましたが、毎年購入しなくてはならないため資材コストが非常に高く、さらに温度・湿度管理が難しく弱い苗になってしまう、という課題もありました。

    当時、温風機は畜産用や花き農家向けには使われていましたが、それをビートの育苗に使うという発想は、まだなかった時代のことです。一般的な温風機ではダクト穴が大きく温風が循環しない、温かい空気が上に逃げてしまうため、ビート苗のあるハウス下部は温度にバラつきがあります。温度が上がらないと、発芽が遅くなったり、低温被害で発芽しないなどの問題がありました。

    また、そのために使われていた保温マットは、加湿しすぎてしまうため徒長してしまったり、立枯病、斑点細菌病など、湿度が関係する病気が発生しやすい状況になります。

    そこで、2人は長府製作所(当時)が作っていた大型の温風機をビート育苗用に改良しようと提案。共同開発することになります。温風器のダクト穴を小さくし、ハウス内の温度を一定に保つサーモスタットを設置、表面が乾燥した場合に使用する散水用の散水機、ダクトという、一連の流れを考え、それを「温風機育苗システム」と名付けました。

    当時作成・配布していた『ダクト式温風機 推進マニュアル』に掲載の全体図。保温マットや二重トンネル、ジェットヒーターは使用せず、ハウス内の温度を一定に保ち、多湿を抑えることを目指しました。

    これまでと違う育苗法に、当初は半信半疑の声もありました。しかし、導入後、「苗の育ちが違う」「病気に強くなった」と実感する農家が続出。ホクレンから相談を受けて、同システムを使った試験を清水ホクレン原料所にて実施したところ、徒長や病害が抑制され強い苗が作られている という結果が得られました。「温度のムラをなくし、かつ乾燥気味に保つ」ことで、過保護にならない強い苗が育つことが実証され、『ビートビジョン』という補助の対象として全道に拡がっていきました。

    のちに、ビート苗の頭刈をするための芝刈機械として「甜刈くん」を販売。活着のよい苗を作るため頭刈を提案しました。

    温風器育苗システムをホクレンに説明する高橋文男(右)

    セイカンらしさ

    安価に、強く、効率よく育てるために。温風機そのものは既製品であっても、その使い方と組み合わせで「新しい育苗法」を生み出す。この発想力と行動力こそが、セイカンの強みです。

    単なる機械販売ではなく、農業経営に貢献する技術提案を届けたい。

    そうした想いが、温風機ビート育苗システムの開発・普及を後押ししました。

    現在とのつながり

    農業機械や資材施設は、決まった時期にしか使わない、年に一度しか稼働しないことも多くあります。サービス課では、そうした機械を毎年点検整備する定期保守契約というメンテナンスがあります。いざ使いたい時に動かない、などで営農作業を中断させないように機械を保守するサービスです。

    ビート育苗システムとして展開した温風機も使う機会は年に一度。そのため定期保守契約などのメンテナンスを通して、今も農家とセイカンの繋がりの一つとなっています。

    このエピソードのDNA

    • 既成概念にとらわれず、課題の根本を問う
    • 1年間の試験を経て実装。2年後には特許を取得するなど、スピーディーな動きで市場をリードする。
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