農業現場に営農資材を届ける、セイカンの転換点

Story

1978年、営農資材の販売を開始、農家の声に応える新たな挑戦が始まる

1978年、セイカンは営農資材販売に乗り出します。ドラム缶洗浄や石油機器のアフターサービスを主軸としていたセイカンにとって、「モノを売る」ことへの挑戦は大きな転機でした。農家とのつながり、粘り強く諦めない営業を武器に、セイカンの資材販売は農家の需要に応えながら拡大していくこととなります。

テキスト:吉田拓実

Index

    セイカンの成長と十勝農業への貢献を両立するため、営農資材販売に乗り出す

    1978年、セイカン(当時・北海道セイカン工業)は営農資材の販売に乗り出しました。きっかけは、1976年に始めた石油燃焼機器のアフターサービスで、サンデンとの取引が始まったことにあります。
    当時、セイカンがアフターサービスを担当していたサンデン製石油ストーブの一部に、新品にもかかわらず不具合が生じた製品がありました。セイカンはそれを買い取り、修理したうえで販売。この出来事が、セイカンにとって初めての「商品販売」となりました。
    その後、アフターサービスを通じて農家を訪れる中で冷凍ストッカーへのニーズに気づきます。サンデンが冷凍ストッカーも製造していたため、セイカンはそれを仕入れ、農家向けの販売を開始。調査通りの需要があり、ストッカーを満載して出発した2トントラックが、空で戻るほどの好調な売れ行きでした。
    それまで、ドラム缶やホームタンクの洗浄、石油機器のアフターサービスなど「サービス業」が主軸だったセイカンにとって、「モノを売る」ビジネスへの本格参入は、大きな転機となりました。

    メーカーに直接足を運び、取引先を開拓

    農家向け資材販売の可能性を確信したセイカンは、取扱メーカーの拡大に動き出します。着目したのは、農家が自ら農機具を整備する際に役立つ電動工具。機械化が進んでいく農業において、電動工具は需要が見込まれ、機械を自分で修理できると農家の生産コスト削減にもつながるため、「十勝農業に貢献する」という理念にも合致していました。
    とはいえ、資材販売の実績が乏しいセイカンが、メーカーと直接取引を始めるのは容易ではありませんでした。まずは商社を介して実績を積み、塚田英樹が自らメーカーに足を運んで信頼を築きながら、1社ずつ直接取引先を開拓していきました。1978年にはリョービ販売(現・京セラインダストリアルツールズ)や重松製作所、1992年にはカクイチ、1997年には工進、ヤマハと代理店契約を締結するに至りました。

    最初は断られて当然、工具を投げられても通い続けた日々

    暖房機器、冷凍ストッカー、電動工具と販売品目を広げていたセイカンは、1981年から農協の資材店舗での販売にも挑戦します。当時すでにホームタンク洗浄やアフターサービスを通じ、農協との信頼関係はできつつありましたが、「販売」で農協店舗に入り込むのは簡単ではありません。競合他社がすでに入り込んでおり、営業活動は「断られて当然」という状況でした。
    その最前線に立ったのが、1981年入社の高橋文男。塚田英樹の「一度であきらめるな」という言葉を胸に、粘り強く各地の農協を訪ね続けました。ある農協では、持参した電動工具を担当者に投げ返される場面もありましたが、それでも通い続けた結果、その農協はやがて高橋にとって最大の取引先となりました。
    塚田英樹自身も営業の最前線に立ち、表から入れば「どこの馬の骨だ」と怒られ、裏から入れば「なぜ裏から入ってくる」と叱られる、という理不尽にも屈せず、丁寧に関係を築いていきました。
    こうした苦労の末に、農協資材店舗への販売は十勝管内から道内各地へと徐々に広がっていきました。

    現場の課題を解決する、セイカンの商品開発

    1982年には、1978年に代理店契約を結んでいた重松製作所と共同開発し、自動吸引式の本格的な農薬マスクを発売。農薬中毒による事故が社会問題化していた背景もあり、このマスクは道内の農協を通じて広く普及しました。
    その後もセイカンは、農家との対話から得た現場ニーズをもとに、商品開発を推進します。酪農家の声から生まれた牛舎換気システム(1984年)や、トラクターの大型化に対応した「はやぶさQ」(1993年)を開発します。その後も、免税軽油管理メーター「テッカー」(1995年)、エンジン洗浄機「せんちゃん」(1998年)、育苗用温風機「FA-450」(2000年)、ビート頭刈芝刈り機「甜刈くん」(2006年)など、メーカーと協力して続々と独自製品を生み出していきました。
    既存の製品を届けるだけでなく、現場の声を形にする商品開発は、「農業に役立つ商品を届ける」というセイカンの姿勢を象徴しています。
    1978年から始まった営農資材販売への挑戦は、セイカンにとって事業拡大の転換点であると同時に、「農家の喜びに寄り添い、農業に喜びを増やす」という思いを形にしていく第一歩となったのです。

    1978年に始まった営農資材は販売は、現在もセイカンの重要な事業の1つとして継続しています。

    このエピソードのDNA

    • セイカンの成長と十勝農業への貢献を両立するために営農資材販売に力を入れた
    • 農家との関わりの中から商機を見出した
    • メーカーに直接足を運んで信頼関係を構築
    • 一度断られても諦めない姿勢で農業資材店舗との取引を始めた
    • 現場の課題解決につながる商品開発に取り組む
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